TikTokで人気がブレイク。青森大学を卒業した今春、上京しYouTubeチャンネルや、スターバックスコーヒーのPR動画出演など、目覚ましい活躍ぶりの佐藤三兄弟。シンクロタンブリング動画で人気に火がついた彼らが高校時代に在籍していたのが宮城県名取高校だ。佐藤三兄弟の他にも、地元宮城県の男子チアチーム「はっくるず」で活躍したり、水族館のショーにも出演など、エンターテインメントにおける男子新体操の可能性を発信し続けてきたチームでもある。
魅力的な作品構成作りには定評のある本多和宏監督のもと、佐藤三兄弟のいた3年間で名取高校は知名度、人気を一気に上げた。しかし、そこで終わらなかったのがこのチームの凄いところだ。佐藤三兄弟が卒業してからも、宮城県のジュニアクラブ「キューブ新体操」育ちの選手たち、さらには高校から新体操を始めた選手たちも加えながら、毎年、インターハイへの出場を続け、常に話題性のある作品を発表し続けてきた。
一昨年の手話、昨年の「チックタック約束の時計台」など、そのストーリー性やメッセージ性の高い演技を高校生ながらやりこなす選手たち、指導ともに卓越したものをもったチームだ。
そんな名取高校の今年のテーマは「つなぐ」。現役生にとっては憧れの先輩だろう佐藤三兄弟の個人演技や彼らが高校時代に演じた団体作品などをモチーフとした作品になっている。そんな予備知識なしでも十分に楽しめる、いつも通りの「かっこいい」演技なのだが、こと佐藤三兄弟を選手時代から追っていたような人なら、かなり感動できる作品と言えるだろう。
マットもなく、演技面と同じ広さを使うこともできない体育館でずっと活動してきた名取高校は、「タンブリングでは不利だから」と独特の振付で勝負してきた面もあった。が、今年になって新体育館が完成し、念願のスプリングマットも設置された。これでさらなる研鑽を重ねられる環境が整った。マットを得た名取高校が「鬼に金棒」の強豪になる日も遠くないかもしれないが、それでもきっと「名取らしさ」を失うことはなく、さらに魅力的になっていくだろう。
マットのない時代、それでも名取を全国でもトップレベルの人気チームにまで引き上げた先輩たちの意思を「つなぐ」今年の演技に、乞うご期待だ。