◆～2020、男子新体操オンライン選手権の始まり
第1回男子新体操オンライン選手権が行われたのは、2020年9月12～13日。新型コロナの感染拡大によって、ほとんどの大会が中止に追い込まれたあの年だ。
この年、高校生の夢舞台であるインターハイも、ジュニア選手の憧れである全日本ジュニアも中止になった。そんな中で、「なんとか男子新体操の選手たちにとっての目標になるものを」と創設されたのがこのオンライン選手権だった。全国30か所（高校20チーム、ジュニア10チーム）をオンラインで結び、東京に集まった審判が採点するという今までとはまったく違う方法で行われた第1回大会の高校生の部ではは、青森山田高校が優勝。また、オンライン選手権ならではの観客賞は、鹿児島実業高校が受賞した。ジュニアの部では、本来なら全日本ジュニア3連覇を狙える位置にいた神埼ジュニア新体操クラブが優勝し、当時のキャプテン・浅田匠は結果が伝えられると号泣した。
本当は、リアルの大会で大勢の観客の前で、拍手喝采を浴び、「やったぞ！」とガッツポーズで応えたかったはずだ。しかし、その機会が奪われてしまった2020年、たしかに「男子新体操オンライン選手権」は、選手たちのかすかな希望の光だった。そして、この試みは同時に、大会会場にまでは足を運ばないライトなファン層におおいにアピールした。オンラインなら、家やスマホで簡単に見れるならと配信を見て「かっこよくてビックリ！」「美しくてみとれた」と沼にはまった人は少なくなかった。コロナ禍という誰も経験したことなかった息苦しい時代に生まれた男子新体操オンライン選手権は、「男子新体操を世間に周知する」という意味でも大きな役割を果たしたのだった。
◆～2021、オンライン選手権は終わらない
2021年も相変わらず新型コロナに振り回された1年ではあったが、この年、インターハイは辛うじて開催された。しかし、コロナの感染は収まっていたわけではなく、無観客開催。新体操のような「観客あってこそ」の競技にとってそれは大きなダメージだった。2021年のインターハイでは井原高校が2019年に続いて優勝し、2年ごしの連覇を達成したが、その演技を会場で見ることができたのは、大会役員や審判のみだった。
「中止になった大会の代わり」という意味ではその役割を終えたとも言えるオンライン選手権だったが、すべての男子新体操関係者の願いである「より多くの人に演技を見てもらう」という意味では、どの大会も無観客開催という状態では満足できるものではない。ならばせめてオンラインで全国の人達に見てもらいたい！ 折しも、この年の春には、男子新体操をテーマにしたアニメも放送され人気を博し、「本物の男子新体操を見てみたい」という人は増えていた。しかし、この年はまだ、一般の観客が観戦できる試合はほとんどなかった。アニメではない、リアルな男子新体操ってどんなものなのか？ そんな興味をもっているファン予備軍に対しても、オンライン選手権ならば「男子新体操の魅力」を届けることができる！ オンライン選手権の存在意義はまだあるのではないか。そんな思いで2021年も開催に踏み切った。結果、インターハイチャンピオンである井原高校が優勝。その芸術性に富んだ演技をオンラインで全国に届けることができた。
また、鹿児島実業高校はインターハイで話題沸騰となった「名探偵コナン」を演じると同時に、鹿児島県予選でのみ公開されていた鹿実の真面目演技「鬼滅の刃」を3年生メンバーで演じ、「やるときはやる鹿実」を見せたこともおおいに話題となった。この年は、夏からオンライン選手権が開催された9月まで新型コロナの感染者が激増しており、当初は出場を予定していたチームの多くが出場を断念せざるを得なかったため、事前収録しておいた動画によるエキシビション参加が11校と大盛況だった。そして、そのエキシビションには男子新体操の王者たる青森大学の団体も出演。まさに「男子新体操の真髄がつまった大会」に成長して、男子新体操オンライン選手権は2年目を終えた。
◆～2022、男子新体操の魅力を伝える競技会としての3年目、男子新体操オンライン競技会がスタート！
新型コロナによって世界が一変してからじき3年になろうとしている。現在もなお、完全に収束したとは言えないが、なんとかwithコロナな世の中になりつつある。新体操の大会も、今年は、2年ぶりにほとんどの大会が有観客で開催されている。いよいよオンライン選手権の役割は終わったようにも思うが、今年も開催することが決まった。
なぜなのか？
それは、男子新体操というコンテンツが、非常に魅力と可能性に満ちているという気づきがこの2年間であったからだ。リアル大会が開催されても、やはり会場に行ける人は限られている。ならば、オンラインという手段で多くの人に、この魅力あふれるスポーツを見てもらおう！ その意義は2年前と変わりなくあると確信したからこそ、3年目の今年、「男子新体操オンライン競技会」として開催することになったのだ。「中止になってしまった大会の代わりに」でスタートした2020年と、「男子新体操の魅力をより多くの人に届ける」を目指す今年と大きく変わったのは出演者のラインナップだ。昨年までは高校生の団体がメインだったが、今回は違う。
昨年もエキシビションで出演した青森大学団体をはじめ、国士舘大学団体のほか大学生の個人選手TOP３や、現全日本チャンピオンの社会人・堀孝輔選手など、個人競技の魅力、大学生や社会人の成熟した演技もおおいにアピールする機会になる。その他、今年大きな話題となった男女MIXの団体演技を見せる社会人チームや、「可愛すぎる男子新体操選手」（5歳）を含むジュニア団体、シルク・ドゥ・ソレイユアーチストを含む新体操OB、OGたちなどが、オンラインであるいは、動画で出演。「新体操のもつ魅力」をあらゆる角度から魅せる競技会になりそうだ。リアルな大会ができないから、がスタートだったオンライン大会だが、その立ち位置、目指すところが大きく変わっての3年目。目玉の高校生団体はインターハイTOP３チーム＋井原高校が出演予定。
「男子新体操を観たい人」には、この上ない極上エンターテインメントになること間違いなしのこのオンライン競技会。今はまだ「男子新体操に出会っていない人」が、この素晴らしいスポーツに出会う契機になってくれることも、祈ってやまない。
