詳しすぎるぞ!出場チーム紹介!!佐賀県立神埼清明高校(佐賀県)
2019年インターハイでは3位。2017、2018と続いた連覇を「3」にのばすことはできなかったが、中山智浩監督になった2001年からの19年間で、優勝6回。表彰台を逃したのは3回だけという強豪中の強豪が神埼清明だ。
※参考記事(2019南九州インターハイ直前企画)
19年間、ずっと強い神埼ではあるが、その強さの中身は少しずつ、着実に変容してきた。そのきっかけになったのは、2010年の沖縄インターハイではなかったと思う。この年、神埼清明は、チームのウリだったスピードと重量感のあるタンブリング、そして圧倒的な高さを誇る組み技を武器に優勝した。が、準優勝だった盛岡市立高校とは僅差での辛勝だった。
その翌年、2011年の青森インターハイでは、井原高校がそれまでの常識を覆すような超高校級の徒手と表現力を見せつけて優勝。ここを境に、「タンブリングと組み頼みでは勝てない」という空気が高まってきた。2013年の佐賀インターハイでも神埼清明は優勝しているが、このときのチームは、従来の神埼同様、組み技やタンブリングが見せ場にはなっていたが、それ以上に徒手の美しさが際立っていた。そして、この後、神埼清明は「脱・組みの神埼」を果たしていく。もちろん、今でも神埼の演技には1~2回の組み技は入っている。しかし、それは過去にも行ってきた技の継承であったり、アレンジしたものだ。かつてのように人をアッと驚かせるような新技には久しく取り組んでいない。
代わりに今の神埼の強みになっているのが、柔軟性と重みのある徒手だ。かつては90度より少し上がれば称賛ものだった男子新体操のバランスは、2011年の井原以降、より高く脚を上げてみせる傾向にある。そんな中でも突出した美しさを見せたのが2017~2018の神埼清明のバランスだ。片手で支持して片脚を高く上げる神埼のバランスは、開脚度180度以上の選手もいる。男子でここまでの柔軟性を身につけるのは並大抵のことではない。が、神埼の選手たちはいわゆるAチームのメンバー以外でもみんなこのバランスができる。生まれつきの柔軟性には差があるにもかかわらずだ。それはつまり神埼の練習方法や環境に「できるようにさせる」ものがあるということだ。今でも、神埼といえばタンブリングの強さも圧倒的なものがあるが、それも同じ理由だ。「突出した選手ではなくてもできるようになる」と信じられるのだ。
今では、日本トップレベルのジュニアクラブ・神埼ジュニアから優秀な選手が毎年入ってくるようになった。が、10年前までは、神埼には「高校始め」の選手が多かった。2017~2018年の連覇メンバーにも高校から新体操を始めた八並剛がいた。
なぜなら、「やればできる」と信じさせる力を、新体操界の重鎮・中山監督はもっている。そして、選手たちの力を、本番で最大限に発揮させる手腕には卓越したものがある。見るからに「勝負師」という風貌の中山監督は、いい意味で「勝つこと」を最優先に考える。今、そこにある戦力でどうすれば勝てるのか、を突き詰めて考える。だから、こだわりが強そうに見えて、じつは非常に考え方が柔軟だ。いわばトレードマークだった「組み技」にもこだわりはあったはずだが、それをいつまでも引きずらない。
神埼清明は今までも強かったが、おそらくこれからも強い。勝たせる力をもった中山監督のもとに、ジュニアでも日本一を何度も経験している選手たちが集まるのだから強くないはずがない。それでも「神埼独走許すまじ!」なライバルたちがいる。オンライン選手権でも、優勝争いは熾烈になるだろうが、神埼清明はきっとその中心にいるに違いない。
「新体操沼はまり歴20年ライターが見る 男子新体操オンライン選手権2020」