男子新体操オンライン選手権まであと3日!こちらも見逃せない! ジュニア団体の熱き戦い
さて。男子新体操オンライン選手権は、ジュニア部門もかなりハイレベルな優勝争いになりそう、ということはわかっていただけたかと思う。
「でも、強いのはTOP3チームくらいでしょ。最後の方だけ見ればいいよね」
そんなことを考えているアナタ、絶対損してます。
たとえば、高校野球をがっつり見ている人は、プロ野球もより深く楽しめる。
高校サッカーをちゃんとチェックしていれば、そこから巣立った選手たちがJリーグや日本代表で躍動する姿を見たときに感慨に浸ることができるだろう。
新体操だって同じだ。ジュニア時代に、小さな体で精一杯頑張っていた子ども達が、高校生になってインターハイで活躍する姿、さらには大学や社会人で深みのある大人の演技を見せてくれるようになったとき、まるで我が子を見るような気持ちで、「よくここまで頑張ってきたね」と感涙にむせぶこともできるのだ。
今大会の決勝には、ジュニアチームが10チームも出る。
コロナ禍で練習不足気味なチームもあるだろうことを思えば、今大会で完璧!な演技はできないかもしれない。「あっちゃー!」なミスをしてしまう選手もいるかもしれない。
しかし、彼らはまだまだ「男子新体操選手」のほんの入り口にいるのだから。その「あっちゃー!」な姿も含めて貴重であり、可能性の塊なのだから。ぜひ、しっかり見ておきたい。
予選4位の滝沢南中学校(岩手県)と、予選9位の滝沢南RG(岩手県)は、同じ滝沢南中学校新体操部のチームだ。競技人口が少ないと言われる男子新体操だが、岩手県の滝沢南中学ではもしかしたら最もメジャーな部活なのではないか。2007年には、全日本ジュニア団体優勝。表彰台にはたびたびのっている。実績があるだけではない。常に2チーム以上は組める部員数を誇り、みんながとても楽しそうというのが滝沢南の新体操部だ。だからこそ、高校でも大学でも新体操を続ける選手も多く、岩手の新体操を支え、盛り上げているチームなのだ。
滝沢南と同じ東北から出場しているのが、予選5位のBLUE TOKYO KIDS(青森県)。ここは、その名前からもわかる通り、新体操強国・青森のジュニアチームだ。大学王者の青森大学、高校トップクラブの青森山田高校を擁する青森県だが、じつはジュニア育成は中学の部活頼み。それも少子化のあおりでややじり貧気味だった。そのため、青森山田高校には県外から進学してくる選手たちが多かったが、ジュニアからの一貫教育体制を作りたい! と2011年に立ち上げられたクラブチームだ。青森山田⇒青森大学と男子新体操を学んできたOBたちが指導にあたり、着実に力をつけ、すでに全日本ジュニアの常連クラブとなっている。青森という土地柄、高校、大学のトップ選手たちから多くの刺激をもらいながら育っているジュニア達は、のびしろも十分。今からチェックしておいて損はないチームと言えるだろう。
ジュニアからの育成では、男子新体操界をリードしてきたのが、予選6位の大垣共立銀行OKB体操クラブ(岐阜県)だ。多くの名選手を輩出してきた同クラブは、今も全日本ジュニアの常連。そして、タンブリングの強さや手具操作の巧みさ、実施力の高さで他を圧倒してきたかつての選手たちとは少し色合いの違ったNew タイプが育ってきている。以前は、OKBの選手たちには力強さと熟練度が強みという印象があったが、今のジュニア選手たちは、美しい線や基本に忠実な体操が際立っているように感じる。かつてジュニアのトップを独走していたクラブだが、戦国時代の様相をなってきた今は、周囲との切磋琢磨の中で、OKBのジュニアたちはさらなる進化と変化を遂げてきている。
「強さ」のOKBに大きな影響を与えたのが、国士舘のジュニア達の存在ではなかったろうか。今大会予選2位の国士舘ジュニア、さらに予選7位にはセカンドチームのKOKUSHIKAN RG(東京都)が入っている。KOKUSHIKAN RGに関しては「予選通過できるかな?」という内部での評価だったと聞くが、構成点が半分というオンライン選手権ルールが幸いし、実施の美しさで決勝進出を果たしたと言われている。2010年に発足した国士舘ジュニアRGも、BLUE TOKYO KIDS同様、現在では全日本ジュニア常連の力をつけてきているが、その一番の持ち味は、体操の美しさだ。現在、大学生、高校生になっている国士舘ジュニアの初代選手たちの団体演技を見たときに、当時は国士舘とは段違いに強いジュニアチームだったOKB(当時はNPOぎふ新体操クラブ)を指導していた坂本コーチは、「なんだこれは!」と国士舘ジュニアの体操の美しさに目を丸くしていた。あのときの衝撃が今のOKBの美しい体操に繋がっていると感じるし、その衝撃を与えた国士舘ジュニアの美しい体操も、今のジュニアにはより色濃く継承されている。難しい技や迫力あるタンブリングはまだ備えていないが、男子新体操の真髄といえる体操だけは、お兄さんたちに負けない! という気概をもったKOKUSHIKAN RGの演技に注目したい。
昨年の全日本ジュニアに団体で初出場を遂げたのが、予選8位の島田ジュニア(静岡県)だ。高校始めがほとんどというメンバーながらインターハイ常連の島田工業高校の新たな力になりそうなジュニア達を着々が育っている。昨年の全日本ジュニアでは、初出場ながら21チーム中14位。今大会でも本番で力を出し切って、持ち味であるキビキビとした演技で予選9位からのランクアップを目指したい。
予選10位通過の丹後ジュニア新体操クラブ(京都府)は、昨年は全日本ジュニア個人には選手が出場していたが、団体ではまだ全日本進出の経験がない。それだけに今回の決勝進出に懸ける思いはひとしおだ。高校生の部に出場している網野高校を練習拠点とし、地道な練習を積み重ね、じりじりと力をつけてきているチームだけに、今回の決勝進出を機にぐんと欲が出てくるのではないかと思う。男子新体操の盛んな京都、とくに網野は近年、大学まで続ける選手も多く卒業後、網野に戻って指導に関わっている元選手も多い。いずれは大化けする可能性を秘めた選手たちの「今」をしっかり見届けたい。
「男子新体操が好き!」という人は、年々増えてきてはいるが、ジュニアまで見る熱意はない、という人は多い。「面白いのは高校生以上でしょ」と断言する人もいる。
しかし!
一度、ジュニア選手たちの演技を見てみてほしいのだ。たしかにまだ脆弱さはあるかもしれない。ミスも散見するかもしれない。
が、その未完成さも魅力のうちだ。彼らが時間をかけ、努力を重ねていった先にはどんな未来が待っているのか。そんな想像を膨らませながら見るジュニアの演技は、まさにキラキラ輝くダイヤモンドの原石のようだ。
どんなスポーツでも、ジュニア時代から選手を見続けるという楽しみ方は、ツウへの第一歩。
大会会場まで足を運ぶことなく演技を見ることができる、このオンライン選手権でぜひその一歩を踏み出してほしいと思う。
9月12日(土)16:30~
男子新体操オンライン選手権ジュニア決勝 お見逃しなく!
「新体操沼はまり歴20年ライターが見る 男子新体操オンライン選手権2020」